【担当教員の感想】
同志社女子大学 学芸学部 情報メディア学科 「eコマース研究」

 本学メディア学科では、商品開発やネット販売、会社経営を通じてさまざまなスキルやクリエイティブ能力を養う目的でバーチャル・カンパニーに参加しました。しかしそれ以外にも参加者たちがバーチャル・カンパニーから学んだものは数多くあったようです。とりわけ支援企業とのかかわりを通じた社会学習や、トレードフェア参加による他社とのリアルなコミュニケーションの楽しさ・難しさの実感などは、得がたい経験となりました。何気なく手にする商品の背後に隠れている複雑な製造・販売プロセスと多くの失敗や努力の存在。自信を持って開発した商品が売れないもどかしさ。消費者を説得し、バーチャルにであれ商品を1つ購入してもらうことの大変さ・・・。
 このプログラムを通じて、参加者は自分たちを取り巻く世界の新たな側面を発見したことと確信しています。受身的に教えてもらうのではなく、自分たちの創意工夫や体験から実践的にさまざまな「知」を学び取ってゆくバーチャル・カンパニーは、まさにこれまでの学びにはなかった構成主義的、かつ効果的な自立/自律学習といえるでしょう。

京都府立大江高等学校 ソフト経済科 導入時間:3年生「総合実践」68時間

 1学期は取引の流れ、仕組み、内容を生徒に理解させるため、模擬取引実習を行い、2学期からのバーチャル・カンパニーの取り組みにつなげた。グンゼ株式会社宮津工場様、大江町商工会様の支援をいただき、2学期からの取り組みに入り、自分たちが企画、運営していく難しさと楽しさを実感できた5ヶ月間であった。生徒が計画を立てた予定が計画倒れに終わった点もあり、生徒は、この取り組みの中で、最後まで物事をやり遂げる難しさと社会の厳しさを感じたようであった。
 反省すべきところは何点かあるが、日々、生徒たちが成長していく姿には、指導する側も驚くことが多く、生徒たちの企画力、行動力には、感心することの多い5ヶ月間であった。

専修大学玉名高等学校 情報処理科 導入時間:3年生「課題研究」43時間

 創造性、チャレンジ精神、チームワークの重要性を毎日の学習活動の中で生徒に体験させたいと思い、バーチャル・カンパニーに参加した。このプログラムはその要求を限りなく満たしてくれるものであった。リスクの無いバーチャルなものであっても起業していく過程を模擬体験する意義は大きい。簿記や会計、情報処理など技術面だけでなく、ビジネスを総合的に学ぶ環境で活動することで、社会人として何が必要か、生徒自身が考える訓練になる。失敗しない人間ではなく、失敗しても恐れることなく、たくましく立ち上がることのできる人間を育てたいと思う。
 私たちの学校は、閉塞した時代に風穴をあける人材を育成したい。第二の松下幸之助、本田宗一郎が育つことを願っている。

京都府立峰山高等学校 機械システム科 導入時間:3年生「課題研究」48時間

 本校では「課題研究」や「実習」の中で製作した作品などを利用し、バーチャル・カンパニーでの販売活動を通して生徒の創造力、企画力、グループの中での協調性や積極性、リーダーシップを引き出すことを目的とした。
 バーチャル・カンパニーでの会社経営体験は生徒たちに実践的な思考を与えるものであり、この活動を通して意外な生徒が責任感や発想力、熱意を見せ、生徒の潜在能力を発見することができた。
 授業を担当して、学校で学習する内容以外のこと、つまり積極性、責任感、人間性、忍耐力、人間関係などの重要性をあらためて痛感し、教師は知識だけを教えるのではなく、将来を見据えて、集団社会の中で自分をどう考え、どう表現していくかを生徒自身にも考えさせ、行動実践させていくための工夫が必要であると感じた。
 VCは実社会の仕組みや流通、人間関係の重要性を体験させる絶好の教材であるが、教師の側の経験不足を痛感し、そこに企業人である支援企業の協力の必要性を感じた。

京都市立福西小学校 導入時間:6年生「総合的な学習の時間」110時間

 本校で2年目をむかえる起業家精神育成教育プログラム「バーチャル・カンパニー」の授業は、子ども達に大変好評である。6年生児童のうち、実に95%の子どもが授業内容にとても興味があるとアンケートに回答しているように、授業中はいつも楽しく活動している。このことは、このカリキュラムが子ども達にとってやりがいがあり、他者から評価してもらう喜びと、やり遂げたことに対する充実感が得られやすいことも要因の一つではないだろうか。
 21世紀を担う子ども達の「生きてはたらく力」になることを信じてこれからも取り組んでいきたい。

京都市立桃山東小学校 導入時間:6年生「総合的な学習の時間」50時間

 子供たちが初めて体験した「起業家教育」。
 これほど子供たちの「創造力」「活動意欲」「集中力」など多くの力をつけてくれた学習はなかったと思います。
 実際に自分たちが力をあわせて製作した商品が、「トレードフェア」や「バーチャル・カンパニー」を通じて販売できたり、一つ一つの商品に愛情をもって接していた姿が、今も印象に残っています。

京都市立有済小学校 導入時間:「総合的な学習の時間」4年生(87時間)、5年生(110時間)

 『「創造する喜び」で「生きる力を」』という試みは、何の努力もなしに生まれるものではなく、社会の様子や日常の暮らしの中にある気づきや発見、人々の生き方や考え方など広い視野と知識、経験などが基礎となり、自分なりのこだわりやよさを生かして形にしていく喜びを味わえるということを実感する学習ができたのではないだろうか。バーチャルではあっても現実とつながっているということ、コンピュータの向こうには人が居るという感性など、これからの情報化社会に生きる児童にとって大切な力を養うことができたように思う。


【児童・生徒の感想】
京都府立大江高等学校 3年生 [Duckie Company 企画部]

 私はバーチャルカンパニーでは企画の仕事をしました。自分たちで商品を企画し、HPを作り、商品を売っていく作業は大変でしたが、売れた時はとても嬉しかったです。また、私はトレードフェアで実際の販売も体験したのですが、とても熱気のあるイベントで商品を実際に売ることができて楽しかったです。決算を終えて、たくさんの人が商品を買ってくれたため売上はありましたが、人件費などの支出の方が多くて赤字になってしまいました。大変でしたが、自分たちが自分たちでがんばれた分、とても充実した授業が送れ、またいろんな経験ができてよかったです。

専修大学玉名高等学校 3年生 [株式会社ぽよた 社長]

 「会社を立ち上げなさい」「ユニバーサルデザインをコンセプトにした商品開発をしなさい」「事業計画を提出しなさい」「収支報告はどうなっている」先生から次々と課題が与えられる。社長の大役を任された私は、日々従業員のチームワークを大切にしながら、新しい課題に取り組んでいった。なかなか思うように商品が売れない。借金は膨らんでいく。会社経営の難しさの一端を垣間見た気がする。みんなの協力に支えられ、やっと目標を達成することができた。創意工夫することやチャレンジすることの大切さをこの授業で学ぶことができた。

京都府立峰山高等学校 3年生 [メカニカルクローバー 総務部長]

 初めは、バーチャル・カンパニーという空想の会社を運営するにあたり、分からないことばかりで苦労しました。その中で一番苦労したことは、各自の商品を製作しホームページに載せることでした。どのようにしたら売れるか?見やすいホームページを作るにはどのようにしたら良いか?この二つのことを真剣に考えました。そしてその結果、自分達の納得のいくホームページ、商品を作ることができました。
 課題研究を終えるにあたり、私は会社を築き上げていく大変さを学び、この課題研究を取って良かったと思います。これらの学んだことを、これからの社会に役立てていきたいと思っています。

京都市立福西小学校 6年生 [クリエイト福西]

 私は、人前で発表することや、知らない人に声をかけることが苦手でした。でも5、6年での総合で、市場調査、プレゼンテーションをして、人前できちんと話せるようになりました。
 商品を考えるときは、最初はなかなか思いつかなかったりしたけど、思いつくとそこからいろいろなアイデアがうかんだりして、とてもおもしろくて、最初は総合があまり好きじゃなかったけど、好きになりました。
 この5、6年での総合の経験を生かして、将来につなげていきたいです。

京都市立桃山東小学校 6年生 [桃山EASTカンパニー]

 ぼくは社長という大きな役割を「起業家教育」の中で体験しました。社長という役割は、ただ社員に指示したり命令するだけの仕事だと考えていました。
 でも、実際には社長自らが動いたり、働いたりしないと会社は動かないということを学びました。実際に造った商品が「トレードフェア」や「バーチャル・カンパニー」を通して売れたときには、とても感動しました。
 ぼくが「起業家教育」の中で一番学んだことは、友達一人一人の考えや思っていることが、よく分かったことです。

京都市立有済小学校 5年生 [総合商社祇園堂]

 はじめに自分の商品を作ってバーチャル・カンパニーで店を出して商品を売りましたが、インターネットで買ってもらった結果が電子メールで送られてきてうれしかったです。もっと売れるようにチラシやCMを作ったりして、みんなに見てもらえたのが楽しかったです。自分で商品を作って本当にお店で売っているみたいな経験ができて、難しかったけどよい経験になりました。自分で商品を売るためにお店の工夫や商品のセールスポイントを考えたり、売る人の立場に立って活動できました。
 この活動を通して、立場を変えて考える力や、もっといいものができるようにあきらめずにがんばる力がついたと思います。また、将来ビジネスに役立ちそうな力がついたと思います。たとえば接客と会社の経営者として商品やお店のことを考えることなどです。